ヒトES細胞の大量培養に成功:再生医療の実現に近づく成果

体の様々な組織の細胞になる能力がある、人の胚性幹細胞(ES細胞)を、大量に培養し効率よく大脳の細胞にすることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹・グループディレクターらの研究チームが成功した。
ES細胞を大量に増やすことができるうえ、脳こうそくや神経難病の治療への応用が期待できるなど、再生医療の実現に大きく近づく成果。
27日の科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に発表される。

人のES細胞はマウスのES細胞と比べて培養が難しく、実験のため1個ずつに分けると、細胞はほとんどが死んでしまう。十分な細胞量を確保できず、研究や将来の治療に使うのに支障になっていた。

笹井さんらは、ES細胞内に“自殺”を促す物質があるとみて、約40種の候補から原因酵素を突き止めた。この酵素の働きを抑えると、ES細胞はほとんど死なず、1個から大量に増やすことができた。酵素の抑制は、薬で簡単にでき、従来の方法より1か月で100倍以上増やせるという。

増やしたES細胞を、マウスのES細胞と同じ方法で処理したところ、9割以上が神経系の細胞になった。このうち3分の1は、大脳の表面を覆う皮質細胞や、体の動きの調節などをする基底核の神経細胞にすることができた。

再生医療は、ES細胞からつくった神経細胞などを、傷んだ細胞の代わりに移植する治療を目指している。笹井さんは「大量培養で研究のすそ野が飛躍的に広がり、アルツハイマー病など大脳の神経変性疾患の原因解明や治療薬の開発にもつながる」と話している。(YOMIURI ONLINE)

ES細胞とは?
生体の組織や臓器の元となる細胞のこと。幹細胞、または胚性幹細胞ともいう。
受精卵が細胞分裂を繰り返し、ある程度の細胞塊になった頃に取り出して培養することで、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力を持ったES細胞を得ることができる。
別の胚に混ぜて培養させると生体の組織や器官を人為的に作り出すことができるため、神経細胞や血液細胞の再生医療の技術として、難病治療への応用が期待されている。
1998年11月、アメリカのトムソン博士によって、ヒトのES細胞の培養が世界ではじめて成功した。

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。