病気が起きた臓器にだけ薬を届ける技術を、大阪大の金田安史教授(遺伝子治療学)らが開発した。薬効成分を包むのに、標的細胞を探す「アンテナ」を付けたウイルスの殻を使う。
病気の場所にだけ薬を「宅配」できれば、それ以外の正常組織への副作用を防げるうえ、薬の量も減らせると期待される。
使ったのは、東北大グループが1950年代に見つけたセンダイウイルス。
ネズミなどに肺炎を引き起こすほか、人の赤血球に害を及ぼすこともある。殻に「触手」のような特殊なたんぱく質があり、ほかの細胞と「融合」する特質をもつ。
金田さんらは、この殻の特徴を残したままウイルスの毒性をなくし、殻の中に薬を入れて薬の「運び屋」にした。患部の細胞と融合すると、内部の薬が放出される仕組みだ。
ただ、そのままでは患部だけでなくいろいろな細胞と融合してしまう。
そこで、最新の遺伝子工学でウイルスの「触手」を改変、標的とする細胞の遺伝子を一部取り込むなどして、標的細胞とだけ融合し、それ以外の正常な細胞とは融合しないようにした。
表皮水疱症という、皮膚の異常が起きるマウスを作って、改良した殻の能力を試したところ、何層もある皮膚のうち、狙った層にだけ融合することが確認された。
狙った臓器や組織に薬を届ける仕組みは、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)と呼ばれる。従来は高分子物質を使う方式が多かったが、今回の手法はウイルスの殻を使う点が独特で国際特許を出願中だ。
金田さんらは、このウイルスの殻に遺伝子を入れて患者に注入する遺伝子治療や、抗がん剤を入れるがん治療への応用研究を進めている。(asahi.com)
センダイウイルスとは?
センダイウイルスは、パラミクソウイルスの一種です。正式名称をマウスパラインフルエンザ1型ウイルスと言い、マウスやラットに感染し肺炎を引き起こします。
東北大学医学部の石田名香雄によって発見され、仙台市にちなんでセンダイウイルスと命名されました。
1957年、大阪大学教授の岡田善雄によって異種の細胞を融合させる作用があることが発見され、バイオテクノロジーの分野で注目を集めることになりました。
現在でも宿主域が広く細胞傷害性の低いベクターとして盛んに用いられています。
