2個の卵子提供が必要だった卵子の若返りを1個だけで可能にする技術を、セントマザー産婦人科医院(北九州市)などが開発した。
この方法で若返らせた卵子を使い、体外受精で受精卵をつくって子宮に戻せる段階まで成長させる実験にも成功。高齢女性などの不妊治療への応用が期待される。
卵子は加齢により細胞質が劣化し、妊娠率が低くなるとされる。このため卵子から取り出した核を、別の若い女性の核を除去した卵子に移し、卵子を若返らせる研究が進められている。
従来の方法は、核が見えやすい未成熟段階で核を入れ替えていた。しかし、この場合、途中で発達が止まってしまうため、体外受精を実施する前にもう一度別の卵子と核を入れ替える必要があり、提供卵子が2個必要だった。
研究チームは、成熟後の卵子の核を顕微鏡で見ることができる技術を開発した。
不妊治療で採取した卵子を体外で成熟させ、この技術を使って取り出した核を、別の患者から採取し核を除去した卵子に移した。顕微授精させたところ、19個の卵子のうち14個が受精。このうち12個が分割を始め、5個が子宮に戻せる段階まで成長。核を1回入れ替えるだけで、高率の受精と成長に成功した。
実験は、日本産科婦人科学会の承認を得て実施され、いずれの卵子も患者から提供の同意を得た。国内では現在、不妊治療のために第三者から卵子の提供を受けることは認められていない。田中院長は「高齢女性の不妊治療だけではなく、核以外の染色体異常が原因といわれるミトコンドリア病など難病の予防にも活用できる」と話している。
ミトコンドリア病とは?
細胞の中でエネルギーを作り出す働きをしているミトコンドリアの機能が低下することによって、主に心臓、骨格筋、脳などに異常を生じる疾患です。厚生労働省による特定疾患(難病)の指定を受けていますので、治療費は公費負担となります。
筋力低下、筋萎縮、知能低下、けいれん、小脳失調、難聴などの症状が現れ、糖尿病や性腺ホルモン異常を合併する場合があります。全身の倦怠感、すぐに疲れるため長い距離を歩けない、手足が麻痺するなどの症状も訴えます。
明確な治療法はありませんが、2007年5月に東京大学の中村祐輔教授らとフランスのパリ大学などの共同チームによって、ミトコンドリア病の新たな原因遺伝子が特定されるなど、診断・治療法の確立が期待されています。
